日本泌尿器科學會雑誌
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形成手術後に尿道皮膚瘻を形成した scaphoid 型巨大尿道の1例
藤田 幸利森岡 政明亀井 義広大橋 洋三松本 茂山本 志雄小倉 朱生戦 泰和杉田 治山下 元幸荒木 徹近藤 捷嘉
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1986 年 77 巻 1 号 p. 151-159

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抄録

知能発育の遅れた6歳男子で scaphoid 型巨大尿道に術後尿道皮膚瘻を有する1例を経験した. 患児は生後2ヵ月の時にソーセージ様の巨大な包茎のある陰茎と, 尿線細小を訴えて高知県立中央病院に入院したが, 包皮切除術に際して巨大尿道が発見され, 直ちに尿道形成術が行われた. その後尿道皮膚瘻が生じたために当科医科大学泌尿器科に入院した. 一般状態は良好で, 他に奇形がなく尿道瘻閉鎖術を施行した.
尿道下裂のない巨大尿道症例の本邦報告例は自験例を含めても僅か2例しかなく, 外国例と合わせて35例を集計することができた. 巨大尿道は scaphoid と fusiform の2型があり, scaphoid 型27例, fusiform 型7例, 両者混合型1例となっている. scaphoid 型は尿道海綿体の欠損で, また, fusiform 型は陰茎, 尿道両海綿体の欠損が原因で生じるとされている. 巨大尿道は種々の先天奇形を合併し, 無形成腎や発育不全腎, 水腎症, 巨大尿管, 巨大膀胱などの尿路奇形や, prune belly 症候群, 鎖肛, 停留睾丸が主なものであり, 奇形を合併しない症例は8例 (22.8%) にすぎなかった. 本症の発生論や治療法などについて文献的な考察を加えて報告した.

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