日本泌尿器科學會雑誌
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尿中結石関連物質の定量に際し蓄尿条件の及ぼす影響に関する研究
宮崎 善久戎野 庄一北川 道夫森本 鎮義安川 修大川 順正
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1985 年 76 巻 6 号 p. 881-888

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抄録

尿中結石関連物質の定量は, 尿路結石患者のrisk factorを探るにあたり, あるいはその再発予防策を講ずるにあたって不可欠な検査であるが, 一般に, これら結石関連物質は24時間尿中への排泄量として測定されている為, 蓄尿中での尿の性状が変化することにより, 時として, その測定値に変動がみられることがある. この事は尿中結石関連物質の定量そのものの信頼性を欠く事にもつながり, また尿路結石患者を扱ううえでの誤まつた結論をひき出す恐れにもつながる事になる.
そこで, 著者らは, 蓄尿中の尿pHの変化や保存温度が, どの程度こうした定量結果に影響をおよぼすかについて実験的に検討すると共に, EDTA, クエン酸, あるいは硝酸リチウムを用いた蓄尿法で, この点が解消し得るものかについて検討した.測定対象は, Ca, Mg, P, 尿酸および蓚酸に置き, 以下の様な結果を得た. Ca, Mg, Pでは, アルカリ性下での測定で, 尿酸では, 逆に酸性下での測定で, また蓚酸については, pHが5以上の場合での測定で変動を生じる恐れのあることが確認された.
更に, 尿酸の測定については, 低温下で保存された場合にも注意を要するものと思われた. これらの結果は, 結石関連物質を含む析出物が生じるためであると考えられた.
蓄尿時にEDTAあるいはクエン酸を使用することで, この析出物をおさえ, Ca, Mg, Pと共に尿酸を含めた同時測定でも比較的安定した結果を得ることができたが, 実際にこれらの方法を日常検査の段階で応用するについては, なお検討の余地が残されているものと思われた.
現状では, 信頼できる尿中排泄量の測定を得るためには, Ca, MgおよびPと尿酸とは別の蓄尿条件を必要とすることは止むを得ないと思われるが, 他方, そうした条件下では各物質ともに, 十分に信頼出来る測定結果が得られることが確認できたことは意義深いものと思われる.

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