1983 年 74 巻 7 号 p. 1228-1235
勃起不全の外科治療法として各種 prosthesis 挿入手術が行なわれており, それらは inflatable type と semirigid double rod type とに大別される. 著者らは骨盤内手術後インポテンスを中心とした28症例に後者の代表的な prosthesis である Finney prosthesis 挿入手術を施行したのでその手術方法と共にその手術成績を報告する. 手術は経会陰法を20例に, 経陰茎基部法を8例に採用, 平均手術時間は前者で75分, 後者で25分であつた. これら28症例全例において, 術後5週目には性交可能となつた. 術後合併症として重篤なものはない. 経会陰法5例において, 1週間以上持続する会陰部痛を訴えたが4週目までには自然消失した. 一方経陰茎基部法例においては疼痛に関する問題はない. また経会陰法例の3例において排尿障害の増悪を認めたが, これら症例は直腸切断術後であり, 自己導尿により対処した. 4例において陰茎浮腫が出現したが, 両手術方法の間において, その頻度に大差はない. つまり著者らは今回の症例において, 感染その他手術に起因する問題により prosthesis を抜去しなければならなかつた症例は1例も経験していない.
インポテンスに対し prosthesis 挿入手術は, 安全確実な治療法であり, 手技的には経陰茎基部法が経会陰法に比較し, 手術時間及び合併症の点において, より適切な方法であろうと考える.