日本泌尿器科學會雑誌
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CTによる腎静脈および下大静脈腫瘍栓塞の診断
増田 富土男陳 瑞昌大石 幸彦町田 豊平
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1980 年 71 巻 6 号 p. 544-551

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抄録

Computed tomography (CT) による腎静脈および下大静脈腫瘍栓塞の診断を4例に行なつたので, その成績について報告した. 症例は1979年1月から6月までの半年間に慈恵大学病院で診療した4例で, 腎細胞癌3例, 腎盂扁平上皮癌1例であつた. 患側は右側3例, 左側1例で, 右側の3例はいずれも腎静脈から下大静脈におよぶ腫瘍栓塞がみられ, 左側の1例は腎静脈内の腫瘍栓塞であつた. 4例とも腎摘出術を行ない, 手術的にも腎静脈および下大静脈の腫瘍栓塞を確め得た例である.
4例はすべて, CTにより腎静脈の著明な拡張がみられ, 腎静脈の腫瘍栓塞が診断された。また腫瘍栓塞が下大静脈までおよんでいた3例中2例では, 拡張した腎静脈に連続して軽度に拡張した下大静脈がみとめられ, さらに contrast enhancement 後のCTでは, 1例に下大静脈の充満欠損がみられた. すなわち静脈内の腫瘍栓塞のCTによる所見としては, 腎静脈および下大静脈の拡張がみとめられ, さらに contrast enhancement 後のCTでは静脈内の充満欠損がみられ, 診断上有用であつた.
今後CTは腎動脈造影, 下大静脈造影, 超音波検査などとともに用いられる価値があるが, とくに腎動脈造影で striated vascular pattern が描出されない例や, 下大静脈造影での充満欠損が, 腫瘍栓塞によるものか, あるいは腫瘍による圧排によるものか不明確な例に有用であろう.

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