海の研究
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瀬戸内海各灘・湾における全リン・全窒素の起源と濃度変動機構
石井 大輔柳 哲雄
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キーワード: TP, TN, 陸起源, 外洋起源, 瀬戸内海
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2004 年 13 巻 4 号 p. 389-401

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抄録

環境省により実施されている瀬戸内海広域総合水質調査で観測された全リン(Total Phosphorus: TP)および全窒素(Total Nitrogen: TN)濃度データから,1981年度~2000年度の冬季の水域別平均値を使用して,瀬戸内海各水域における陸域と外洋起源のTPおよびTN濃度推定を試み,水域特性を明らかにした。その結果,大阪湾では陸起源のTPが6割,TNが7割も存在し,陸域からの影響が支配的な水域であることが分かった。これは,同湾へのTPおよびTN負荷量が瀬戸内海総負荷量の約1/3と非常に多い上,それが内海随一の河川流量を誇る淀川を経由して湾内に流入するためであると推察される。一方,伊予灘や周防灘などの瀬戸内海西部では外洋からの寄与率が8割以上を占めており,東西で対照的な水域特性を有することが判明した。また,各水域における外洋起源のTPおよびTN濃度変動が紀伊水道・豊後水道のどちらを通じての影響をより強く受けているかについて検討した結果,平均的にはTPおよびTNともに備讃瀬戸近辺を境に西では豊後水道,東では紀伊水道を通じての影響が優位であることが分かった。その理由の一つとして,備讃瀬戸を境に形成される東西の密度流の構造が考えられる。

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© 日本海洋学会
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