教育心理学研究
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英単語学習における自覚できない学習段階の検出
長期に連続する日常の場へ実験法を展開する
寺澤 孝文吉田 哲也太田 信夫
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2008 年 56 巻 4 号 p. 510-522

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抄録

本研究は, 一般の学習内容の習得プロセスに潜在記憶が関わっている可能性に着目した。特に, 潜在記憶研究で報告されている, わずかな学習の繰り返しの効果が長期に保持される事実から, 一般的な学習の効果が長期にわたって積み重なっていくことを予測し, その予測の検証を目指した。具体的には, 習得に時間がかかり, 何度勉強してもなかなか憶えられないと感じる英単語学習について, 高校生を対象に8ヵ月にわたる長期学習実験を実施した。実験では, 1000を超える英単語の一つ一つについて, 学習とテストがいつ生起するのか, また, 学習とテストのインターバルがほぼ等しくなるよう学習スケジュールをあらかじめ制御する新しい方法論が導入された。学習者はコンピュータを使った単語カード的な学習を自宅で継続した。膨大な反応データを集計, 分析した結果, 自覚できないレベルで, 学習の効果が積み重なっていく様子が明確に描き出された。考察では, この事実と潜在記憶の関係性が指摘され, 新たに導入されたスケジューリング原理の有効性が確認された他, 本研究の教育的意義が示された。

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© 日本教育心理学会
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