日本消化器外科学会雑誌
Online ISSN : 1348-9372
Print ISSN : 0386-9768
ISSN-L : 0386-9768
臨床経験
腹膜播種陽性胃癌に対するS-1+パクリタキセル経静脈・腹腔内併用療法の経験
大橋 紀文神野 敏美小林 大介田中 千恵山田 豪藤井 努野本 周嗣藤原 道隆竹田 伸小寺 泰弘
著者情報
ジャーナル フリー HTML

2012 年 45 巻 11 号 p. 1137-1143

詳細
抄録

 腹膜播種陽性胃癌に対してS-1+パクリタキセル(以下,PTXと略記)経静脈・腹腔内併用療法が注目されているがPTXの腹腔内投与は保険収載がなく日常臨床として行うことはできない.2011年より高度医療評価制度を用いて臨床試験を実施することとなり,協力機関としての承認を受けるために,当院の生命倫理審査委員会の承認を経て,腹膜播種陽性進行,再発胃癌に対して5例の投与経験を得た.3週を1コースとしてS-1 80 mg/m2 2週,day 1,8にPTX 50 mg/m2静脈投与および20 mg/m2腹腔内投与し,可能なかぎり継続した.治療継続期間中央値は13か月であり4例で1年以上の無増悪生存が得られた.特に同時性転移例では3例中2例で腹膜播種の消失を認めR0-1手術が可能となった.2例にGrade 4の好中球減少を認めたが減量により継続は可能であった.本治療は腹膜播種陽性進行再発胃癌に対して有望な治療法と考えられる.

著者関連情報

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc/4.0/deed.ja
前の記事
feedback
Top