1998 年 31 巻 12 号 p. 2364-2368
回腸腸間膜静脈瘤を原因として消化管出血を来したWilson病の1例を経験した. 症例は28歳の女性.19歳時よりWilson病と診断され, 小康状態であった. ところが平成8年12月13日より突然下血を繰り返したため, 平成8年12月16日, 精査目的に入院となった. 血管造影 (上腸間膜静脈相) にて右卵巣静脈とシャントを形成する回腸腸間膜静脈瘤を認め, その部位からの出血と診断し, 腸間膜静脈瘤を含む回腸部分切除術を施行した. 既往歴に虫垂切除術があり, 腸間膜静脈瘤の発生に関与したと考えた. Wilson病を基礎疾患とする異所性静脈瘤の報告例は本邦初でまれであり報告した.