日本消化器外科学会雑誌
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肝切除術後における血漿アミノ酸の推移
とくに, 肝予備能との関連について
中本 実成瀬 勝柳沢 暁秋田 治之高橋 恒夫長尾 房大
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1987 年 20 巻 1 号 p. 49-55

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抄録

肝硬変併存肝癌における術後血漿アミノ酸の推移と肝予備能との関連を検討した. 47例の肝切除のうち肝硬変併存肝癌は22例に施行した. 肝硬変併存症例における肝不全発症例は3例 (13.6%) に見られた. 総アミノ酸濃度は肝不全非発症と発症例では術前には差が認められなかったが, 術後第1~3病日には発症例が非発症例の約3.5倍に達した.
BCAA/AAAモル比では術前1.8, 1.2, 第1~3病日には1.2, 0.9と発症例が低い傾向であった. 第7病日には非発症例は術前値に復帰したが, 発症例では低値を持続した. 肝予備能として, グルカゴン負荷テストによる10分値でのΔcyclicAMP/ΔBS比を算出し, 肝不全発症との関連を検討すると, 発症例では2.7, 非発症例では30.9となり, アミノ酸モル比と正の関係を見た. ICGR15とアミノ酸モル比との相関は認められなかった. Fisher液の投与はとくに肝硬変併存例では, 第1~3病日のモル比が全例低下するため, 積極的に行っている. 肝不全発症例に対し, 時期の判断を誤ったためか, 血漿交換を行っても救命しえなかった. 術後第7病日にもモル比が術前に復帰しない症例は肝不全発症予備群と考え, 積極的な治療が望まれる.

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