日本臨床細胞学会雑誌
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症例
肺動脈肉腫の 1 例
星 利良元井 紀子古田 則行小松 京子栁谷 典子杉山 裕子石川 雄一宝来 威
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2016 年 55 巻 2 号 p. 94-99

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抄録

背景 : 肺動脈肉腫はまれな疾患で, 術前に確定診断が得られにくく, その細胞学的特徴は明確にされていない.
症例 : 50 歳代, 男性. 持続する咳嗽を主訴に当院受診. 画像上, 左下葉に結節があり, 原発性肺腫瘍の疑いにて左下葉切除術および縦隔リンパ節郭清が施行された. 摘出材料の捺印細胞診標本では, 小型単調な腫瘍細胞が上皮様結合を有する細胞集塊として認められた. 腫瘍細胞は多辺形が主体で, 厚みのある細胞質を有し, 核は類円形で, 一部に核偏在性が認められた. また, 細胞質内および核内空胞が目立った. 腺癌を疑ったものの, 核異型に乏しく反応性増殖細胞と考えた. 組織学的には紡錘形の腫瘍細胞が肺動脈内から周囲組織, リンパ節に浸潤増殖した肺動脈肉腫と診断された.
結論 : 本症例での肺動脈肉腫の捺印細胞所見は, 比較的異型に乏しい上皮様異型細胞に細胞質内および核内空胞が見出されることが特徴的であると考えられた.

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© 2016 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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