右房に発生した血管肉腫を経験したので報告する. 症例は60歳男性で, 労作時呼吸困難および発熱にて受診, 胸部X線写真にて心拡大, 胸水貯留を指摘され, 胸部CTにて右房内腫瘍を認め当院入院, 腫瘍摘出術が施行された. 摘出検体から作成した捺印標本にて出血性背景に腫瘍細胞が孤立散在性もしくは中規模集塊を示して出現していた. 腫瘍細胞は紡錘形, 類円形などの多彩な形態を示し, 核は類円形で, 核膜は均等に肥厚しており, クロマチンは穎粒状で明瞭な核小体を有していた. 組織学的には核異型の著明な内皮細胞におおわれた大小不規則な血管形成が認められた. 免疫染色では腫瘍細胞はVimentin, CD34およびFactor VIII relatedantigen (VIIIRA) に陽性を示した. 以上の所見より血管肉腫と診断された. 血管肉腫の細胞所見は多彩であり, 細胞診のみでの診断は困難である場合が多いが, 心臓原発の場合には鑑別対象となる腫瘍の細胞学的特徴や発生部位などの臨床情報を把握することにより推定診断に近づきうると考えられた.