2016 年 56 巻 4 号 p. 248-254
症例は25歳の男性.6歳で視神経炎,12~16歳で3回の大脳白質脱髄巣が出現した再発寛解型多発性硬化症(multiple sclerosis; MS)である.25歳で,嘔吐を伴う胃腸炎に罹患後,脳静脈洞血栓症(cerebral venous sinus thrombosis; CVT)を発症し,腰椎穿刺で悪化した.アンチトロンビン(AT)の低下を認め,AT遺伝子エクソン5番目のコドン359のCGAがTGAに置換したナンセンス変異のAT欠損症ヘテロ接合体であった.MSにCVTが合併した17例が過去に報告されており,腰椎穿刺と高容量メチルプレドニゾロン(mPSL)投与がCVTを誘引した症例が多い.本例はmPSL治療は行ってないが,AT欠損症に,高ホモシステイン血症,感染,腰椎穿刺が加わり発症増悪したと推測した.