オレオサイエンス
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特集総説論文
β-クリプトキサンチンと生活習慣病リスクとの関連:疫学研究からの知見
杉浦 実
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2012 年 12 巻 10 号 p. 515-523

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抄録

果物・野菜に多く含まれているビタミン・カロテノイド類は何れも抗酸化作用を有し,生体内の酸化ストレスに対して防御的に働くと考えられている。近年の疫学研究から,カロテノイド類を豊富に含む果物・野菜の摂取量あるいは血中カロテノイドレベルとがんや循環器系疾患,糖尿病等の様々な生活習慣病リスクとの関連が報告されており,カロテノイド類がこれらの生活習慣病の予防に有効ではないかと考えられている。β-クリプトキサンチンは国産主要果実である温州ミカン(以下,ミカン)に特徴的に多く含まれているカロテノイド色素の一種であり,我々はこれまでの研究から,血中β-クリプトキサンチンレベルからミカン摂取量を推定できることを明らかにしてきた。現在,我々は国内主要ミカン産地である静岡県三ヶ日町の住民を対象にした栄養疫学調査(三ヶ日町研究)を継続的に行っている。これまでの横断的解析から,血中β-クリプトキサンチンレベルと動脈硬化や肝疾患,メタボリックシンドローム等の様々な生活習慣病リスクとに有意な負の関連があることを見出してきた。本稿では,β-クリプトキサンチンに関する最近の疫学研究の知見について紹介する。

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© 2012 公益社団法人 日本油化学会
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