2018 年 124 巻 9 号 p. 759-775
断層の内部構造に関し,この25年間における主として日本地質学会員の成果を中心にまとめた.脆性断層の研究において,野島断層掘削をきっかけに内部構造のみならず,断層の水理学的性質や摩擦の研究がさかんに行われ,断層研究における大きな転機となった.より深い脆性領域の断層岩内では圧力溶解クリープと,雲母類の塑性変形が報告され,そのダメージは結晶内歪を周囲の岩石に与えることなどが明らかになった.また脆性–塑性遷移領域に対しては応力や歪速度の条件を地質学的の評価しようとする試みが行われ,破壊開始過程や変形の空間的不均質が明らかにされている.さらに下部地殻では斜長石や輝石の転位クリープの一方で,変形中の細粒物質の生成による変形機構遷移の重要性が指摘されている.近年,下部地殻における破壊現象の痕跡が見つかっており,地震による応力集中が一つの可能性として考えられている.その理解には今後の研究が期待される.