2013 年 119 巻 4 号 p. 285-299
古浦層は島根県東部に分布する地層で,これまでの年代に関する研究から,下部中新統とされる.この地層の下部は河川や氾濫原,湿地の堆積物,中部は湖の環境の堆積物である.中部では上位ほど堆積場は浅くなることがわかった.上部は浅い汽水環境の堆積物である.上部ではハンモック状斜交層理の存在から,水域が大きく広がったと解釈される.スランプ構造が見られ,かつ粗粒堆積物が卓越する上部はファンデルタの堆積物と判断される.成相寺層は海成の斜面堆積物で,日本海が大きく拡大した時の堆積物である.
古浦層中部と上部の基底では,およそ10 mまでの厚さの礫層・砂層がその下位の陸上の堆積物を覆い,それは上位へ向けて湖の堆積物へと漸移する.この堆積物が広い範囲に見られることから,この堆積物は湖の水位が上昇する時のイベント堆積物であると解釈される.堆積物の特徴からそれぞれのイベント堆積物は,湖の決壊洪水に伴う堆積物と推定される.こうした決壊洪水イベントはリフト盆地形成の初期に発生しうる.この古浦堆積盆が海とつながったのはおそらく中部と上部の境界が形成されたときであろう.