地質学雑誌
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論説
東京低地臨海部の沖積層にみられる湾口砂州の形成機構
田辺 晋中島 礼内田 昌男柴田 康行
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2012 年 118 巻 1 号 p. 1-19

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抄録

湾口砂州は,湾口かその外洋付近に形成される海面下の起伏地形で,潮汐の卓越した狭長なエスチュアリーに形成される.後氷期の海水準上昇期,日本列島の沿岸河口低地にはこのようなエスチュアリーが分布していた.しかし,日本列島の沖積層から湾口砂州堆積物はほとんど報告されたことがない.東京低地臨海部における4本のボーリングコア堆積物の堆積相と放射性炭素年代値を検討したところ,この地域の標高20~35 mに貝殻が点在する生物攪乱を受けた砂質堆積物が分布し,5~9 kaの形成年代を示すことが明らかになった.同時間線の示す起伏地形からこの堆積物は主に海水準上昇期に下げ潮によって形成された湾口砂州堆積物と解釈される.エスチュアリーシステムの最上部を構成するこの堆積物はデルタシステムのプロデルタ泥層によって覆われる.湾口砂州堆積物は東京低地と分布形態が似た日本列島の他地域の沖積層からも発見される可能性が高い.

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© 2012 日本地質学会
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