地質学雑誌
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論説
栃木県塩原地域の中新統鹿股沢層の堆積環境変化と年代
吉川 敏之
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2005 年 111 巻 1 号 p. 39-49

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抄録

栃木県塩原地域に分布する鹿股沢層は,岩相から火山岩類に富む下部,砂岩~シルト岩を主体とする上部に大きく2分され,いずれも海底に堆積した地層である.鹿股沢層下部のうち最上部のデイサイト火砕岩のフィッション・トラック年代は10.4±0.3 Maであり,鹿股沢層上部のうち下部層準の極細粒砂岩の有孔虫年代はN.16帯下~中部に対比された.鹿股沢層上部からは塩原動物群と呼ばれる貝化石が多産し,本地域では10~10.5 Maより後に繁栄したと考えられる.また,この年代は鹿股沢層と下位の福渡層が不整合関係である可能性を示唆する.鹿股沢層下部と上部との間には,海退・海進による環境変化が岩相変化から認められる.このうち海退には火山体の成長が影響していると考えられる一方,本地域東方の烏山および棚倉地域でも鹿股沢層下部と上部の境界年代に近い時代に顕著な海進が認められており,本地域の海進が同じ相対的海水準変動に対比される可能性がある.

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© 2005 日本地質学会
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