地質学雑誌
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論説
紀伊半島中央部, 奈良県中奥地域にみられる中新世岩脈の古地磁気と岩石磁気
星 博幸神谷 直宏川上 裕中島 和夫
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2004 年 110 巻 11 号 p. 686-697

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抄録

中奥地域の中期中新世火砕岩岩脈は300~400℃で消磁される正帯磁残留磁化をもつ. この磁化は初生の熱残留磁化と解釈されてきた. 本論で筆者らはこれが熱水作用に伴って生じた熱化学残留磁化であるという解釈を提示する. 詳細な磁気測定と反射顕微鏡観察は磁化の担い手がピロタイトであることを示す. ピロタイトは火砕岩の定置後に熱水変質によってその場でできた二次生成物である. 火砕岩岩脈の近傍に産する玄武岩質安山岩もピロタイトに担われる正帯磁磁化を持ち, これも火砕岩と同時期に獲得された熱化学残留磁化と推定される. 他方, 石英斑岩岩脈は南向きの偏角と深い伏角をもつ逆帯磁磁化をもち (担い手はマグネタイト), これは初生熱残留磁化と考えられる. 石英斑岩は15Ma前後の逆磁極期に, 伏角が深い時に貫入・冷却したと判断される.

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© 2004 日本地質学会
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