応用地質
Online ISSN : 1884-0973
Print ISSN : 0286-7737
ISSN-L : 0286-7737
愛知県旧小原村の風化花崗岩類における崩壊発生密度の岩相間での比較
戸邉 勇人千木良 雅弘土志田 正二
著者情報
キーワード: 花崗岩類, 風化, 表層崩壊, 岩種
ジャーナル フリー

2007 年 48 巻 2 号 p. 66-79

詳細
抄録

1972年, 愛知県小原村では豪雨により花崗岩類の崩壊が多数発生した. われわれはその被災地で崩壊の分布・密度に対する岩相と降雨量の影響を数値的に検討した. 5時間で約200mmの降雨を受けた同一地域であるにもかかわらず, 花崗岩地域の崩壊密度は293/km2であり花崗閃緑岩の値 (13/km2) を一桁以上上回った. また, 花崗岩地域では降雨量増大とともに崩壊密度の増大が認められたが, 花崗閃緑岩地域では認められなかった. 航空レーザー測量を約3km2の範囲で行い, 空中写真と対比し, この災害時だけでなくそれ以前に発生した崩壊も抽出した結果, 崩壊密度の差がこの災害以前から存在し続けていたことがわかった. これらの差は, 岩相間で風化帯構造が異なることによると推定される. 花崗岩地域ではDH~DM級の硬質なマサがもっとも広く分布し, それらは斜面表層部に明瞭な緩み前線を伴っていたため, 崩壊しやすかったと推定される. また, 一部の花崗岩にはマイクロシーティングが発達し, 崩壊発生を助長していた. 一方, 花崗閃緑岩地域ではDL級のマサが広く分布し, それは強風化しているが, 明瞭な緩み前線を伴っていなかったため, 崩壊数が少なかったと推定される.

著者関連情報
© 日本応用地質学会
次の記事
feedback
Top