応用地質
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1596年慶長伏見地震による古墳の地すべり
釜井 俊孝寒川 旭守隨 治雄
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キーワード: 古墳, 地すべり, 地震
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2008 年 48 巻 6 号 p. 285-298

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抄録

今城塚古墳と西求女塚古墳に見られる, 墳丘の地すべりを記載し, 地すべりの発生原因, 移動メカニズムについて考察した. 今城塚古墳では, 新たな年代測定値が得られ, 古墳の崩壊が, 1596年慶長伏見地震によるものであることがほぼ確実となった. トレンチでの観察から, 地すべりの過程は, 震動による盛土のブロック化→基盤粘土中のすべり面の形成 (地すべりの発生) →長距離移動 (基盤粘土の流化) のプロセスをたどったと推定される. また, こうした推定は, 盛土と基盤粘土の土質試験結果からも支持される. 西求女塚古墳では, トレンチでの観察と基盤砂層の動的変形試験結果から, 古墳の南半分が載っていた基盤砂層の液状化によって, 盛土が引きずり落とされるように滑ったものと推定される. 古墳自体は入念に作られたものであり, 多くの場合, 古墳における崩壊・地すべりの主な原因は, 基礎地盤の問題であると考えられる. すなわち, 古墳の地すべりは, わが国のような活発な変動帯に立地する都市において, 基礎地盤情報の収集が, 災害のリスク評価の精度を左右する, 極めて重要な要因であることを示している.

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