応用地質
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鹿島灘海岸の海浜地形と堆積環境
日向野 崇
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2003 年 44 巻 5 号 p. 274-282

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抄録

本研究では, 沿岸域の持続可能な開発と浸食対策事業への提案をするために鹿島灘海岸の第四紀地質, 水理, 堆積物調査資料の解析によってミティゲーション概念を基本とする堆積環境影響評価を行った. 海岸は, 海浜地形, 粒度分析, 砂粒組成, フルード数から次のように分類された. 1. 凹地型海岸, 2. バー型海岸, 3. カスプ型海岸である.
凹地型海岸は浸食傾向にあるが, 一方では漂砂の供給源になっている.
バー型海岸は, 波浪営力の大きい冬季に沖側へ運搬された堆積物が夏の静穏期に, 海岸に戻る過程にあると見られ, 季節的な変動の中で安定した海岸である.
カスプ型海岸のうち, 緩勾配の海岸は, 静穏域となっており, 安定または堆積傾向の海岸である. 比較的急勾配の海岸は, 凹地型の特徴も有しており, 安定または浸食傾向の海岸である.
浸食傾向の強い海岸では, 湾入率を大きくすることによって, 安定した海岸へ移行させることが可能である. しかし, 浸食傾向の海岸は漂砂の供給源でもあるため, 海岸全体を考慮した対策が望ましい.
沿岸域の持続可能な発展のためには, 各海岸の自然状態の傾向維持や回復を目標とした沿岸域の利用・浸食対策が必要である.

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© 日本応用地質学会
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