2020 年 30 巻 3 号 p. 353-357
アブミ骨手術は他の耳小骨再建術よりも術後聴力成績が良好であるとされているが,満足のいく聴力改善が得られずに再手術が行われる症例を経験することがある。症例は先天性アブミ骨固着症と診断された7歳女児で,両側に複数回のアブミ骨手術を要した。本例においてテフロンワイヤーピストンからテフロンピストンに変更することで聴力が安定したことから,テフロンワイヤーピストンが脱落した症例において長めのテフロンピストンが有効であると考えられた。また本例では複数回手術後も電気味覚閾値は正常であり,耳手術による鼓索神経障害は成人より小児の方が回復しやすいと考えられた。