日本栄養・食糧学会誌
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食餌制限したラットで誘発する骨粗鬆症に対するエストロゲンの効果
孫 麗曼大田 豊勝山 直文玉 城一屋宏 典知念 功
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2002 年 55 巻 3 号 p. 149-155

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抄録

骨粗鬆症の予防研究に必要となる確実な誘発法として食餌制限が有効であることを示し, さらに女性ホルモンであるエストロゲン投与が予防法の一つとして効果的であることを明らかにした。6週齢の Wistar 系雌ラットにAIN-93G標準食を10日間自由摂食させて予備飼育した後, 5匹ずつ4群に分けて, 食餌制限とエストロゲン投与を行って3週間の飼育実験を行った。対照群となる Group 1にはAIN-93Gを自由に摂取させ, 残りの群にはタンパク質, ミネラルおよびビタミン量を標準食の2倍に調製した制限食を Group 1の摂食量に対して50%食餌制限した。Group 3には, 標準量としてホルモン療法における体重50kgの女性への1日当りエストロゲン投与量 (0.625mg) をラットの体重 (100g) 当りに換算した1.25μgを投与し, Group 4にはその5倍を投与した。本研究によって次の結果を得た。(1) 食餌制限のみの Group 2は, 大腿骨の破断エネルギーおよび骨密度が低く, X線の透過度が高い骨粗鬆症の症状を示し, その発症に対して食餌制限が効果的であることを確認できた。(2) 食餌制限してもエストロゲンを投与した Group 3および4は大腿骨の破断エネルギーと骨密度は対照群 Group 1と同様に高く, X線の透過度は低くなり, 食餌制限で誘発する骨粗鬆症症状をエストロゲン投与で抑制できることを明らかにした。(3) 血清中のエストロゲン濃度は, 対照群 Group 1に比べて食餌制限のみの Group 2では有意に低く, エストロゲン投与群 Group 3および4では有意差はみられなかった。(4) 子宮の重さも対照群 Group 1に比べて Group 2は有意に低く, Group 3および4では有意差はみられなかった。(5) 食餌制限によって誘発される骨粗鬆症は, それに伴うエストロゲンの欠乏が要因の一つであると判断した。

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© 社団法人日本栄養・食糧学会
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