2014 年 43 巻 3 号 p. 146-149
61歳男性.動悸と立ちくらみを主訴として来院した.両上肢および顔面に著明な浮腫を認め上大静脈症候群の状態であった.心エコー検査にて心房中隔を中心とし右房内を占拠する巨大な腫瘤(径77×91 mm大)を認め上大静脈の閉塞および下大静脈から右房,右室への血流は巨大腫瘍によって妨げられていた.放置すれば静脈還流が途絶して突然死となる恐れがあると判断した.そこで血行動態の改善と病理診断を目的に右房内腫瘍摘出手術を施行した.術後経過は良好で摘出標本の病理組織所見より心臓原発のびまん性大細胞型B細胞性悪性リンパ腫と診断した.術後に化学療法(R-CHOP)を行い完全寛解を得た.術後2年半が経過した現在,再発の兆候はなく外来通院中である.心臓原発の悪性リンパ腫の治療は化学療法や放射線治療が主体であるが,危機的な血行動態を是正し病理組織学的検討の材料を提供できる点で外科的治療は有用であると考えられた.