日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告
悪性リンパ腫の診断における心嚢液細胞診の有用性の検討
浅井 英嗣新宮 康栄内藤 佑嗣若狭 哲大岡 智学橘 剛久保田 卓松居 喜郎
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2013 年 42 巻 6 号 p. 494-498

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抄録

心臓悪性腫瘍は一般に予後不良で稀な疾患である.多様な画像検査によりその診断率は上昇しているが確定診断が得られず治療方針の決定に難渋する症例が多い.今回,局所麻酔下・剣状突起下アプローチによる心膜生検と心嚢液細胞診の心臓腫瘍,特に悪性リンパ腫の確定診断における安全性と有用性について検討した.対象は心臓腫瘍の確定診断が得られないため治療が開始できなかった5例.無症状が2例,有症状が3例であった.男性3例,女性2例で平均年齢74歳(60~81歳)であった.局所麻酔下・剣状突起下アプローチ手術は全例で合併症なく短時間で安全に行えた.心嚢液細胞診の診断率は60%(5例中3例)であった.心膜生検は3例に施行したが陽性例はなかった.最終診断は4例で悪性リンパ腫,1例でリンパ腫であった.局所麻酔下・剣状突起下アプローチによる心嚢液細胞診は開胸を要さず安全かつ簡便に行え,診断に難渋する心臓悪性腫瘍,特に悪性リンパ腫において有効な一診断手段であると考えられた.また悪性リンパ腫の診断には心膜生検は必ずしも必要でないことが示唆された.

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