2013 年 42 巻 3 号 p. 186-189
異型大動脈縮窄症は胸部下行大動脈に多くみられるが,拡大を伴う胸腹部大動脈完全閉塞例は稀である.今回われわれは51歳男性で,吐き気および間歇性跛行を主症状として発見された,腹部分枝動脈閉塞を伴った異型大動脈縮窄症の症例に,腹部分枝動脈再建と上行大動脈-腹部大動脈(分岐部直上)バイパス術を施行し,上肢の高血圧の軽減と下肢血流の改善が得られ,さらに腎機能の改善も認められた.炎症反応は陰性であったが,血管造影所見とHLA-B52陽性であることから成因として高安動脈炎が考えられた.術後3年目の現在,経過良好であるが,胸部下行大動脈のさらなる拡大や,腹腔動脈が閉塞する可能性があり,今後ともきめ細かい外来フォローアップが重要と思われる.