日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告
一次性大動脈腸管瘻の1救命例
石川 和徳緑川 博文菅野 恵小野 隆志森島 重弘
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2008 年 37 巻 2 号 p. 144-146

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抄録

症例は79歳,男性.突然の腹痛後に大量吐血し,ショック状態に陥った.造影 CT 所見から大動脈腸管瘻 (AEF) と診断し緊急手術を施行した.経腹膜法で腎動脈下腹部大動脈と空腸間の瘻孔部に到達した.瘻孔部を含めた大動脈および空腸を切除し,大動脈は PTFE 人工血管を用いて解剖学的再建を行った.空腸は端々吻合で再建したのち人工血管を大網で被覆した.腸管の浮腫が強く閉腹困難であったため,エスマルヒ駆血帯を利用して一時的に閉腹し,術後4日後に二期的に閉腹術を施行した.術後感染兆候なく経過は良好であった.瘻孔部の病理所見から,動脈硬化性穿通性潰瘍 (PAU) による動脈壁の局所的突出部が腸管へ破綻して生じた PAEF と推定した. AEF の予後は著しく不良で救命率も低く,とくに一次性大動脈腸管瘻はその発生頻度も希であることから文献的考察を加え報告する.

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