1999 年 28 巻 2 号 p. 136-139
症例は60歳男性. 58歳時に発作性心室頻拍を発症. このとき心臓エコー上, 右室前壁の肥厚を認め, 心臓腫瘍が疑われ経皮的心内膜心筋生検を施行されるも腫瘍組織診断が得られなかった. それから6カ月後, 完全房室ブロックのためペースメーカーを植え込まれた. 発症から2年後, CT上, 右室前面から大動脈基部に至る心筋内浸潤性の心臓腫瘍が疑われたため, 組織学的診断の確定と可及的外科的切除を目的として手術を施行した. 胸骨縦切開下に心筋生検を行い悪性リンパ腫の診断を得たが腫瘍はすでに広範に伸展しており根治切除は元より部分切除も不能であった. 一般に心臓悪性腫瘍は生前診断が難しく, 本例のごとく悪性疾患が疑われる場合には, 確実な直視下生検により可及的早期に診断を得ることは疾患の治療方針や予後を知るうえで妥当な選択肢の一つと思われた.