日本視能訓練士協会誌
Online ISSN : 1883-9215
Print ISSN : 0387-5172
ISSN-L : 0387-5172
一般講演
核上性垂直眼球運動障害に対する視能矯正の効果
浅川 賢石川 均庄司 信行清水 公也
著者情報
ジャーナル フリー

2010 年 39 巻 p. 87-92

詳細
抄録

【目的】核上性垂直眼球運動障害に対して視能矯正を施行し、その効果を検討すること。
【症例および方法】22歳の男性、松果体腫瘍治療後に残存する正面および上方視時の複視を主訴に来院した。初診時所見として視力、視野は正常、眼位はskew deviation(6△LH(T))を伴い、垂直注視麻痺はほぼ治癒していたが、上方視における衝動性眼球運動時の眼球運動速度低下と滑動性眼球運動時の輻湊後退眼振、対光-近見反応解離が見られた。また体育教諭を目指しており、実技実習が困難である問題点を有していた。そこで視能矯正としてプリズム眼鏡処方および月に1回外来にて大型弱視鏡によるfusion lock trainingとEOGによる眼球運動訓練(狭義)、家庭訓練では赤フィルターとメジャーテープによる方法を毎日20分間施行した。訓練効果は融像域(°)と眼球運動速度(deg/sec)にて判定した(垂直方向は1△=0.5°換算)。
【結果】訓練開始時、正面視に対する複視はプリズム眼鏡にて消失するも、上方視時の違和感は解消されなかった。また大型弱視鏡による融像域は右方20°、左方30°、上方0.5°、下方2°と上方が狭く、衝動性眼球運動時のundershootも見られたが、訓練6か月後には融像域が左右方向ともに30°、上方2°、下方3°と拡大し、眼球運動速度も250deg/secから285deg/secとなり、自覚症状が改善された。
【結論】訓練期間が6か月にも及び患者の意欲も重要ではあるが、核上性垂直眼球運動障害に対する視能矯正により融像域拡大と眼球運動速度の改善が認められた。

著者関連情報
© 2010 日本視能訓練士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top