2012 年 10 巻 2 号 p. 91-98
高齢者が認知症や寝たきりにならずにできるだけ長く健康寿命を保つために、厚生労働省は早期診断と早期治療に加え、栄養・運動・活動への参加など健康的な行動による予防政策を打ち出している。本研究の目的は、地域在住の高齢者229名を対象に、日常活動への参加状況が運動機能や認知機能と関連があるかを検討することである。10種類の活動への参加頻度を5件法にて質問紙で調査し、運動機能(10メートル歩行速度・重心動揺・最大一歩幅・背筋力)と認知機能(3数字抹消検査・言語流暢性検査・散文の記憶再生)は個別に測定した。因子分析と相関分析の結果より、社会的活動・仕事・公共交通機関の利用や運転を高頻度で行っている者は認知機能も運動機能も良好であった。一方、家事・テレビ・親しい人との交流など主に家庭内での活動に取り組んでいる者は、高齢期に低下すると言われている注意機能や記憶機能には良い影響を示さなかった。高齢者は家に閉じこもらず、交通機関を利用して外出し、社会参加に努めることが機能維持につながると考える。