第四紀研究
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野尻湖湖底堆積物中の有機炭素・全窒素含有率および花粉分析に基づく約25,000~6,000年前の気候変動
公文 富士夫河合 小百合井内 美郎
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2003 年 42 巻 1 号 p. 13-26

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抄録

1988年に野尻湖湖底から採取されたオールコア試料の上部について,30~50年間隔の精度で有機炭素(TOC)・全窒素(TN)の測定と花粉分析を行った.
4点の14C年代測定,鬼界アカホヤ(K-Ah)および姶良Tn(AT)の指標火山灰年代に基づいて推定した堆積年代と,TOC・TNおよび花粉の分析結果に基づくと,遅くとも14C年代で1.4~1.5万年前より前には落葉広葉樹花粉の増加で示されるような温暖化が始まり,以後,「寒の戻り」を伴いながら約1万年前まで温暖化が進行した.約1.3万年(較正年代1.5万年前)前後には,「寒の戻り」を示す亜寒帯針葉樹花粉の明瞭な増加が認められる.約1,2万年前(較正年代1.4万年前)には,広葉樹花粉の急増と針葉樹花粉の激減があり,同時に全有機炭素・窒素量の激増も認められ,短期間のうちに急激に温暖化が進行したと推定される.なお,14C年代で約1.45万年前にも微弱な広葉樹花粉の減少が認められる.
これらの気候変動のパターンは,北大西洋地域の気候イベント(新旧ドリアス期など)とよく似ているが,本稿における編年に基づけば,北大西洋地域よりもそれぞれ2,000~3,000年ほど古いようにみえる.較正年代で約1.3万年前と9千年前においても,軽微な気候変動が認められ,そのうちの後者はボレアル期に対比できる.

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