Ng-1火山灰層(Ng-1:0.30Ma)は,飛騨山脈の火山が給源と推定され,東海から近畿・四国に分布する中期更新世の広域テフラである.しかし,給源近傍ではその存在が確認されず,情報に乏しい.一方,飛騨山脈に近い高山盆地周辺に分布している高山軽石層(Tky)は,鉱物構成などから大町APmテフラ群(APms:0.33~0.40Ma)と対比され,また白山火山周辺から噴出したという見解が示されたことがあったが,その詳細は不明であった.
本研究では,Ng-1とTkyとが対比されることを明らかにした.その根拠は,1)鉱物組合わせ,斑晶鉱物の屈折率,チタン磁鉄鉱の主成分化学組成などの記載岩石学的特徴が一致すること,2)ともに飛騨山脈南西部が噴出源と推定され,そこから日本のテフラとしては稀な南西方向を主軸として分布すること,である.
この結果,Tkyの噴出年代がおよそ0.30Maであることが明らかとなり,年代指標の少なかった高山盆地の中期更新世編年に貴重な時間軸が求められた.