日本透析医学会雑誌
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長期間の慢性維持血液透析を施行し得たミトコンドリア脳筋症の1剖検例
友成 治夫吉田 裕明小村 香與子今澤 俊之平野 景太栗山 哲森永 正二郎渡部 和彦城 謙輔宇都宮 保典酒井 紀
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キーワード: 維持血液透析, 乳酸負荷
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1996 年 29 巻 6 号 p. 1097-1102

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抄録

近年ミトコンドリア遺伝子異常が注目されてきているが, 今回いわゆるミトコンドリア脳筋症のうちMitochondria myopathy, encephalopathy, Iactic acidosis and stroke-like episodes (MELAS) に慢性腎不全を合併し22か月の長期にわたり維持血液透析を施行し得た症例を経験した. 本症例ではMELASの診断時 (25歳) すでに軽度の腎機能障害がみられており, その後約7年で透析導入となった. 維持透析として当初はCAPDを考えていたため, 基礎疾患にある乳酸アシドーシスの悪化が懸念された. このため事前に乳酸負荷を行いその悪化のないことを確認した. しかし透析液のリークのため, CAPDは断念し血液透析に変更しその後比較的順調な経過を送っていた. しかし22か月後に頭部外傷が原因で死亡した. 生前の手術時に得た筋組織, 動脈壁からは異常ミトコンドリアが観察された. 剖検腎は萎縮していたがglobal sclerosisの糸球体の一部に著明なhyalinosisを認めFGS (focal glomerular sclerosis) 様病変が観察され腎不全に陥った腎障害の病因に-考を与える可能性も考えられた.

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