日本森林学会誌
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論文
天然秋田スギ個体の肥大成長に土壌深・土壌水分・光・隣接木との競争が与える影響
井上 みずき石川 雄一星崎 和彦高階 史章松下 通也蒔田 明史
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2016 年 98 巻 3 号 p. 101-107

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抄録

資源減少に伴い,天然スギ林では立木ごとの個体管理が重要となってきている。そこで,およそ300年生の天然秋田スギが生育する仁鮒水沢スギ植物群落保護林において,1-ha 調査区を設定し,2006年と2010年に毎木調査を行い,スギの肥大成長速度を把握し,土壌深(A層とAB層の厚さの合計値)・土壌水分(体積土壌含水率)・光(樹冠の相対凹凸度)・隣接木との競争(立木周辺の他のスギ立木の胸高断面積(BA)合計密度)が成長速度へ及ぼす影響を明らかにした。スギの胸高直径(DBH)は80.4±25.3(平均±SD)cm,DBH 成長速度は0.18±0.21cm/year であった。観測された水分条件範囲の大部分で,土壌水分の増加に対し,DBH 成長速度は減少していると一般化線形モデルから推定された。本調査地では一部の立木が過湿状態に置かれている可能性があるが,土壌水分と連動する他の土壌養分の影響の可能性もあるので精査が必要である。さらに,隣接木のBA合計密度が成長に負の影響を与える傾向にあったことから混み合った状態で隣接したスギと土壌水分以外の光や養分獲得の競争が起きている可能性もある。

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© 2016 一般社団法人 日本森林学会
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