2021 年 124 巻 5 号 p. 733-741
頸部腫瘤13例 (良性9例, 悪性4例) を提示し, 診断とともに鑑別点について述べた. このうち6例は甲状腺に関連する疾患 (甲状腺癌の充実性・嚢胞性転移各1例, 異所性甲状腺2例, 慢性甲状腺炎1例, 慢性甲状腺炎からの悪性リンパ腫1例) であり, 加えて, 1例 (迷走神経鞘腫) は当初に甲状腺癌と考えられていた. このように, 甲状腺疾患は形を変えて腫瘤として現れるので, 気道, 頸部のどこにおいてもほかの腫瘤との鑑別が重要と思われる. また, 頸部腫瘤において, 良性と思われてもまず正確な診断をつけることが重要である. さらに, 良性と判明しても, 安易に放置せず定期的な経過観察を行う, あるいは, 画像診断を含め経過観察を行える医療機関に紹介するのが適切と考える.