日本耳鼻咽喉科学会会報
Online ISSN : 1883-0854
Print ISSN : 0030-6622
ISSN-L : 0030-6622
総説
耳鼻咽喉科領域における再生医療の最前線
―神経幹細胞を利用した中枢神経再生医療―
安井 徹郎中島 欽一
著者情報
ジャーナル フリー

2015 年 118 巻 2 号 p. 98-106

詳細
抄録

 中枢神経系は神経細胞 (ニューロン) が無数のシナプスを介して複雑な神経回路を形成し, グリア細胞 (オリゴデンドロサイト, アストロサイト) がこれらと密接に連携することで, 高次機能を司っている. これらのニューロン・オリゴデンドロサイト・アストロサイトは多分化能と自己複製能をもった共通の神経幹細胞から分化する. しかし, いったん中枢神経系が傷害を受け, 軸索の途絶あるいは神経系細胞の細胞死が引き起こされ, 神経回路が崩壊してしまうと, 成体哺乳類では十分にそれを再生させることができない1). そのため現在でもほとんどの中枢神経疾患に有効な治療法が存在せず, 多くの患者が高次機能障害による ADL (activities of daily living: 日常生活動作) の著しい低下に苦しみ続けている. 損傷された中枢神経を再生するためには, それぞれの病態を解明し, それに応じて神経発生過程で起こる現象の少なくとも一部を再現する必要があると考えられている. 近年, 中枢神経障害のうち脊髄損傷に関して, 神経幹細胞移植を利用した治療法の有効性が示されたため, その臨床応用も検討されている.

著者関連情報
© 2015 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top