日本耳鼻咽喉科学会会報
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総説
嗅覚研究・臨床の進歩
—嗅覚検査の現状と展開—
三輪 高喜志賀 英明塚谷 才明古川 仭
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2008 年 111 巻 5 号 p. 399-404

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抄録

わが国の嗅覚検査の現状と今後の展望について概説した. 嗅覚検査は自覚的検査と他覚的検査に分類されるが, 現在臨床で用いられているのは自覚的検査のみである. 自覚的検査の中で, 保険診療として請求が認められているのは, T & Tオルファクトメーターを用いた基準嗅力検査とアリナミン液を用いた静脈性嗅覚検査のみである. しかし, 基準嗅力検査の施行率は極めて低く, 診断はほとんどの施設において静脈性嗅覚検査のみによりなされている. そこで, 日本人のにおい同定能を測定するために開発されたスティック型嗅覚検査を用いて臨床研究を行ったところ, 本装置を用いることにより, 嗅覚障害の診断が可能であることが証明された. また, 本検査は人間ドックなどのスクリーニングとしても有用であることが判明した. 今後, 一般臨床でも使用可能となるような働きかけが必要である. 一方, 他覚的検査に関しては, fMRI, PETなど測定装置は病院レベルで普及しつつあるが, 適切なにおい刺激装置がないため, その使用は実験室レベルで嗅覚中枢の同定など基礎実験レベルにとどまっている. 今後, 一般臨床で使用可能なにおい刺激装置の出現により, 一段の飛躍が期待される.

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© 2008 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
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