日本耳鼻咽喉科学会会報
Online ISSN : 1883-0854
Print ISSN : 0030-6622
ISSN-L : 0030-6622
味覚障害の診断•治療における心理テストの有用性について
串田 京子梅本 匡則根来 篤任 智美阪上 雅史
著者情報
ジャーナル フリー

2006 年 109 巻 10 号 p. 736-741

詳細
抄録

近年,味覚外来における心因性味覚障害の患者が増加している.今回我々は,自己評価式抑うつ性尺度(self-rating depression scale:SDS)の有用性について検討した.2001年1月から2004年10月までの3年9ヵ月の間に兵庫医科大学耳鼻咽喉科味覚外来を受診し,SDSテストを施行することのできた258例(男性85例,女性173例,平均年齢61.1歳)を対象とした.初診時に問診,SDSテスト,電気味覚検査,濾紙ディスク法,安静時唾液検査を施行した.SDSテストにおける精神状態の分類と味覚障害治療の転帰には関連があり,SDS正常群では回復•回復傾向が79.8%,SDSスコア神経症群では,71.7%が回復•回復傾向にあるが,SDSスコアにて抑うつ状態を示す群では,回復•回復傾向を示したのは,50%に過ぎず,抑うつ状態の患者では治療効果が低かった.SDSテストは精神状態を数値化し,短時間で簡便に施行することができるため,患者状態の把握や治療判定に有用であると思われた.

著者関連情報
© 日本耳鼻咽喉科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top