日本耳鼻咽喉科学会会報
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当科における両側性耳下腺腫瘍症例の検討
渡辺 哲生一宮 一成鈴木 正志茂木 五郎
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1999 年 102 巻 10 号 p. 1169-1174

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抄録

当科にて昭和56年10月より平成10年3月まで加療した両側性耳下腺腫瘍について検討した. 同時期に加療した耳下腺腫瘍は, 良性腫瘍が172例, 悪性腫瘍が40例で計212例であった.
両側性耳下腺腫瘍は13例にみられた. 平成4年以降は年1例以上みられ, 増加する傾向にあった. 組織学的には腺リンパ腫が11例, 多形腺腫, 基底細胞腺腫が各1例で, 両側性耳下腺腫瘍の85%が腺リンパ腫で, 全腺リンパ腫の20%が両側性であった. 1例は異時性であった. また手術後両側に再発したものが1例あった. 13例中7例は初診時の触診では一側の腫瘍を触知せず, 後の画像検査の結果, 両側性であることが判明した.
両側性と一側性腺リンパ腫を比較すると, 年齢, 性別には有意差はみられなかった. 両側性では両側孤発が4例, 一側孤発他側多発が4例, 両側多発が4例であったのに対して一側性では孤発が38例, 多発が4例と両側性腫瘍で多発する傾向がみられた. in situ hybridization法によるEBERの検出では両側性は12例中11例, 片側性では35例中18例で検出され, 一側性症例の中でも多発性症例ではより高頻度に検出された.
今回の検討から, 両側性耳下腺腫瘍は決してまれではなく, 特に腺リンパ腫が疑われる場合, 反対側の耳下腺についても画像所見に注意する必要がある. また, 腺リンパ腫の多発性にEBウイルスが関与している可能性が示された.

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