感染症の中でも特に難治とされている骨・関節感染症に漢方治療が有効であった2症例を経験したので報告する。[症例1]34歳,女性。MRSA 肺炎からDIC となり治療を受けていた。この間,左股関節の異常に気付かず,化膿性股関節炎を発症。5回の手術が施行されたが,創は閉鎖せず浸出液排出が続いた。補中益気湯の内服で発熱を認めなくなり,創部に良好な肉芽が形成された。千金内托散料に転方後は浸出液量が減少し,十全大補湯への転方と創外固定術が施行されると,上皮化も進行し,創は閉鎖した。[症例2]79歳,女性。大腿骨頚部外側骨折に対し骨接合術が施行された1年6ヵ月後,手術痕が自壊し,多量の浸出液が排出され,遅発性術後感染症と診断された。十全大補湯の内服で栄養状態が改善するとともに,MRI で浸出液減少と瘻孔閉鎖が確認された。難治性の骨関節感染症には補剤が有効であり,黄耆と人参を増量することでさらに高い治療効果が得られたと考えた。