日本東洋医学雑誌
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C型慢性肝疾患 (慢性肝炎・肝硬変症) 難治例に対する十全大補湯の治療経験
多羅尾 和郎岡本 堯宮川 薫遠藤 修多羅尾 範郎政木 隆博
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2003 年 54 巻 1 号 p. 191-198

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抄録

C型慢性肝疾患には強力ネオミノファーゲンC (SNMC) とウルソデオキシコール酸 (UDCA) を併用してもGPT値が低下しない難治例が多数存在し, 苦慮するところである。われわれはこれらの症例に十全大補湯を追加投与し3剤併用の効果を試みた。
〔方法〕肝生検にて診断が確定したC型慢性肝炎および肝硬変症でSNMC+UDCAの2剤併用でもGPT値が80単位未満に低下しなかった21例 (慢性肝炎9例, 肝硬変症12例) にツムラ十全大補湯7.5gを6ヵ月間追力口投与した。
〔結果〕C型慢性肝炎では十全大補湯投与により9例中3例 (33.3%) でGPT値が有意に改善した。一方, C型肝硬変症では12例中5例 (41.7%) で有意な改善が認められた。また, 臨床症状では, 全体で易疲労感は20例中12例 (60.0%) 食欲低下は19例中10例 (52.6%) の症例で改善した。6ヵ月以上投与できた症例では6ヵ月以降に改善する例も認められた。
〔結論〕C型慢性肝疾患でSNMC+UDCAの2剤併用療法でもGPT値が80単位未満に低下しない難治例では, 十全大補湯を加えた3剤併用によりGPTが有意に改善し臨床症状も改善する症例がかなり認められ, 試みるべき治療法の一つと思われる。

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