2011 年 72 巻 4 号 p. 950-954
症例は53歳,男性.神経線維腫症1型と診断されている.今回,血便を自覚し,他院にて直腸カルチノイドと診断された.精査加療目的で当院に紹介され,入院となった.下部消化管内視鏡検査で,歯状線より約3cmの部位に11mm大の粘膜下腫瘍形態の腫瘤を認めた.腹部CT検査では,直腸前壁に壁肥厚を認めたが,明らかな遠隔転移は認めなかった.直腸カルチノイドの診断で,腹腔鏡補助下直腸低位前方切除術を施行した.病理組織学的には粘膜下層に浸潤した直腸カルチノイドで,リンパ節転移は認めなかった.神経線維腫症1型には,一般的にカルチノイドは併発しやすいとされているが,十二指腸乳頭部領域に多く,直腸カルチノイドの合併は極めて稀である.今回,神経線維腫症1型に伴う直腸カルチノイドに対し,腹腔鏡補助下直腸低位前方切除術を施行した症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.