日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
傍結腸溝に嵌入した盲腸周囲ヘルニアの1例
宇井 崇宮倉 安幸笹沼 英紀関口 忠司
著者情報
ジャーナル フリー

2006 年 67 巻 2 号 p. 355-359

詳細
抄録

盲腸外側の後腹膜窩より傍結腸溝に沿い小腸が嵌入し,従来の分類とは若干異なる盲腸周囲ヘルニアの1例を経験したので報告する.症例は82歳,女性.腹痛,嘔吐にて近医受診し腸閉塞の診断にて当院紹介となる.腹部CTでは盲腸を内側へ偏位させる拡張した腸管を盲腸外側に認めた.腹部超音波では右下腹部に約3cmのto-and-froを伴う低エコー濃度腫瘤陰影を認めた.減圧目的のイレウス管挿入後の小腸造影では,右下腹部の小腸に強度の狭窄像を認めた.盲腸周囲ヘルニアによる腸閉塞と診断し,病変直上の小開腹による緊急手術を施行した.盲腸外側傍結腸溝に直径約1cmの腹膜陥凹部を認め,約10cmの小腸が嵌頓していた.腸管を整復後ヘルニア門を縫合閉鎖して手術を終了した.内ヘルニアには,盲腸外側の傍結腸溝に嵌入する盲腸周囲ヘルニアもあり,特徴的な画像診断により早期診断に努め,侵襲を最小限に抑えた治療を目指すことが肝要である.

著者関連情報
© 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top