日本臨床外科学会雑誌
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大腸検査前処置が発症の誘因と考えられた虚血性直腸炎の1例
竹山 廣光高橋 広城川島 隆司山本 稔佐藤 幹則真辺 忠夫
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2005 年 66 巻 2 号 p. 432-436

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抄録

症例は78歳の男性. S状結腸癌の診断で他院から紹介され当院受診.前医での大腸内視鏡検査では直腸に異常所見は指摘されていなかった.腫瘍の口側が検索されていなかったために,再度大腸内視鏡検査を行うことになった.その際に前処置として前前日にsen-noside, 前日にsodium picosulfate, 当日朝からPEG-ELS (Niflec) を内服した.しかしPEG-ELS内服後に大量の排便があり,それからしぶり腹様の腹痛と肛門痛,発熱,下血が出現した.大腸内視鏡検査を行うと直腸Rsに2型の腫瘍を認めたが,肛門から下部直腸に浅い地図状の潰瘍と粘膜壊死を認め虚血性直腸炎と診断した.予定していた手術を延期し,流動食と補液で保存的治療を行い腸炎は改善した.発症から3週間後に根治手術を施行しえた.大腸検査前処置により虚血性腸炎が発生することは稀に報告されているが,通常血流が豊富な下部直腸でしかも腫瘍の肛門側に発生したという報告はこれまでない.今回の腸炎の発症には大腸検査前処置が関与しているものと推測され,高齢者の大腸内視鏡検査前処置には改めて注意を要するものと考えられた.

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