日本大腸肛門病学会雑誌
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直腸カルチノイドの臨床病理学的研究
とくに免疫組織化学的悪性度指標の検討
長谷川 修三岩下 明徳二見 喜太郎喜多村 邦弘有馬 純孝
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1997 年 50 巻 3 号 p. 163-176

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抄録

内分泌細胞癌を除き低悪性度の腫瘍とされている直腸カルチノイドの特徴,ならびに悪性度の指標を明らかにするために,101例106病変の切除例を対象として臨床病理学的ならびに免疫組織化学的に検討を行った.平均年齢54.5歳,男性に多く,部位別には下部直腸に高頻度であった.固定標本上腫瘍は平均6.05mmであり,径の増大とともに深達度は深くなり,表面性状からみると中心陥凹・潰瘍形成が深達度と深く関与していた.とくに10mm以上になると陥凹・潰瘍形成が顕著となり筋層におよぶ症例もみられた.組織所見としては核分裂像陽性率およびKi-67陽性細胞出現程度が,腫瘍径では5mm以上,表面性状からは陥凹・潰瘍形成例で有意に高かった.転移を生じた4例(3,9%)を悪性群として検索を行い,直腸カルチノイドの悪性度の指標,ひいてはリンパ節郭清を含む腸管切除の適応として,これまでに指標とされてきた腫瘍径,表面性状,核分裂像に加えて免疫組織化学的所見として,Ki-67陽性細胞の強い出現程度ならびにp53陽性所見がさらに重要な因子と考えられた.

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