2013 年 74 巻 2 号 p. 85-91
紀伊半島の河川に生息するテナガエビ,ミナミテナガエビ,ヒラテテナガエビを対象に,mtDNA CO I領域の部分塩基配列を用いたPCR-RFLP法による種の判別法を検討した。形態形質により同定できた各種合計62個体のmtDNA CO I領域の部分塩基配列をPCRによって増幅し,制限酵素Bsp1286Iで処理して得た制限酵素切断片パターンは,種によって明らかに異なり,種内変異は認められなかった。また,形態形質では同定できなかった95個体の制限酵素切断片パターンは,全て3種のいずれかのパターンと一致した。これらの結果から,本手法は,紀伊半島の河川に生息するテナガエビ属3種の同定に有効であり,形態では同定が困難な若齢個体や雌個体の種の判別法として活用できることが明らかとなった。