石油技術協会誌
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秋田油田地域における新第三系生層序の変遷(摘要)
高安 泰助
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1980 年 45 巻 5 号 p. 267-269

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抄録

一般にある地域の地質層序を組み立てる場合,岩相の特徴によって区分する岩相層序区分と,地層中に含まれる化石や化石群集の特徴を一括して地層を区分する化石層序区分あるいは生物層序区分とがあり,さらに地質年代を知るために年代層序区分という方法もとり入れられている。以上3者の層序区分の組み合せによって地域ごとの層序が広域に対比されるようになる。
秋田県内では,すでに1920年代に男鹿半島の新第三系の層序がまとめられ(外山四郎,1925),秋田油田の標準層序として近年まで踏襲されてきた。それと相前後して県内各地の油田図幅が刊行され,地層対比に大型化石の貝類や植物化石の共通種が用いられるようになった。1940年頃には貝類化石動物群による新第三系の地質年代論の基本的検討が大塚弥之助ほかによってなされ,生物層序区分への道も開かれた。
1950年頃から大型化石とともに底生有孔虫化石層序が油田開発に登場し,油田堆積盆内の対比や堆積環境の解明に有効に利用されるようになった。1960年代後半からわが国の新生代の浮遊性有孔虫による化石層序の研究が急速に進展し,1970年代には浮遊性有孔虫とともに他の微化石,珪藻•放散虫•石灰質ナンノプランクトンや花粉•胞子などによる層序との組み合せによる綜合的な微化石層序が設定され,国際的な対比にまで作業が進められてきている。
微化石は地層中に広く分布しており,個体数も多く,垂直的にも連続して取出せるという利点があるので,地層の区分にはきわめて精密な分帯も可能である。大型化石は微化石と違って世界的な共通種が少ないことと,堆積環境の差によって同一時代でも含まれる種類に差が現われることから,広域の対比には適用されていない現状である。しかし微化石の場合でも,標準層序の設定されている地中海沿岸と,わが国のような高緯度地域の北方型群集との連続的対比を行なうことに問題のあることは明らかである。とくに中新世中期以降では日本海の生成発達史と関連して,暖流系群集の優勢な表日本と寒流系群集の卓越する裏日本という地理的な群集の対立が認められるところでは,化石層序の適用もそれぞれ別個の基準を設ける必要があろう。

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