日本周産期・新生児医学会雑誌
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症例報告
妊娠中に胃食道重積を呈し,上部消化管内視鏡で保存的に整復した一例
髙野 苗江中尾 朋子神谷 亮雄吉田 彩辻 祥子岡田 英孝
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2021 年 57 巻 1 号 p. 146-151

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抄録

 胃食道重積(Gastroesophageal intussusception:GEI)は胃壁の一部が食道内腔へ陥入するまれな状態で,Mallory-Weiss症候群や食道穿孔に進行し,大量出血をきたし得る疾患である.今回,妊娠中に発症したGEIを内視鏡的に整復し,選択的帝王切開術で再発なく周産期管理できた一例を経験した.症例は原因不明のイレウス既往のある28歳,初産婦.妊娠31週0日に頻回の嘔吐と増強する腹痛のため受診した.妊娠31週2日に血性嘔吐が出現し,胸部X線検査で食道の拡張を認めた.MRI検査で拡張した食道に胃が陥入しておりGEIの嵌頓を疑った.妊娠31週3日,全身麻酔下に上部消化管内視鏡検査を施行しGEIを整復した.胃壁に裂傷を認めたが,壊死や穿孔は認めなかった.分娩時の努責による腹圧上昇でGEI再発のリスクがあると考え,妊娠37週5日に選択的帝王切開術を施行し,2,290gの女児を娩出した.妊娠中のGEIはまれな病態であり,妊娠中の整復方法や分娩方法に関する一定の見解はまだない.我々の調べる限り妊娠中に発症したGEIを上部消化管内視鏡下に整復できた報告は世界で初めてである.

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© 2021 日本周産期・新生児医学会
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