細菌はべん毛によって運動することができる。しかし,その運動は,生育に全く必要ない。研究室の培養環境では,べん毛欠損株は,野生株と全く同様に生育する。べん毛は20個以上の構成タンパク質から組み立てられ,それらのべん毛構造蛋白質をコードする遺伝子や発現を調節する遺伝子が50個以上存在する。べん毛の組み立てコストは非常に大きなものであるが,運動器官として進化したということは,それだけ大きなコストをかけても,細菌の生き残りには必要ということなのだ。本総説では,筆者らが行ってきたべん毛関連研究とビブリオ属菌のべん毛研究を中心に解説したい。