食品衛生学雑誌
Online ISSN : 1882-1006
Print ISSN : 0015-6426
ISSN-L : 0015-6426
報文
油脂および脂肪性食品用合成樹脂製器具・容器包装の蒸発残留物試験に関する考察
河村 葉子 和田 岳成山口 未来六鹿 元雄
著者情報
ジャーナル フリー

2019 年 60 巻 4 号 p. 82-87

詳細
抄録

食品衛生法では,油脂および脂肪性食品に使用される合成樹脂製器具・容器包装に,溶出試験として蒸発残留物を規定している.合成樹脂製品について,蒸発残留物試験と欧州標準規格EN1186-2によるオリブ油への総溶出物試験を実施し,両者の比較から蒸発残留物試験の溶出条件と規格値について考察した.食品衛生法に従い,ヘプタンを用いて25℃ 1時間溶出後の蒸発残留物量を測定したところ,多くの試料で規格値の30 μg/mL以下であった.また,耐衝撃性ポリスチレン,ポリメチルペンテン,ポリ塩化ビニル(PVC)では30 μg/mLを超えていたが,いずれも緩和された規格値(240, 120, 150 μg/mL)以下であった.一方,オリブ油への総溶出物量を測定したところ,60℃ 30分間ではPVCを除いていずれも定量限界以下であった.しかし,95および121℃ 30分間ではポリエチレン,ポリプロピレン,PVCにおいて30 μg/mLを超える溶出が見られ,蒸発残留物量より高かった.すなわち,一般の使用では現行の溶出条件で対応できているが,高温使用の場合は溶出条件や規格値の緩和が適切ではない可能性が示唆された.

著者関連情報
© 2019 公益社団法人 日本食品衛生学会
前の記事 次の記事
feedback
Top